東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2656号・昭26年(ネ)2658号 判決
(一) 第一審被告は第一審原告に対して、別紙目録<省略>(一)の土地について、つぎの(1) (2) (3) の登記手続をなすべし。
(1) 浦和地方法務局川口出張所昭和二十六年七月十三日受附第二四八五号同第二四八八号同第二四八九号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約により取得の各抵当権登記の抹消、
(2) 同庁昭和二十六年七月十三日受附第二四八六号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約により取得の停止条件附所有権移転請求権の登記の抹消、
(3) 同庁昭和二十六年七月十三日受附第二四八七号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約により取得の停止条件附賃借権設定請求権の登記の抹消、
(二) 第一審被告は第一審原告に対して、別紙目録(二)ないし(五)の土地について、つぎの(4) の登記手続をなすべし。
(4) 浦和地方法務局川口出張所昭和二十六年七月十三日受附第二四八五号同第二四八八号同第二四八九号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約によつて取得した各抵当権を移転する附記登記、
二、第一審原告のその余の請求は、棄却する。
三、訴訟費用は第一、二審を通じ、五分の一は第一審原告の、その余は第一審被告の負担とする。
二、事 実
第一審原告はつぎのような判決を求めた(以下で、これをかりに、「控訴の趣旨」とよぶ)。
原判決中、原告敗訴の部分を取消す。
第一審被告は第一審原告にたいして、別紙目録(一)の土地について、つぎの登記手続をすべし。
(1) 浦和地方法務局川口出張所昭和二十六年七月十三日受附第二四八五号同第二四八八号同第二四八九号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約により取得した各抵当権登記の抹消、
(2) 同庁昭和二十六年七月十三日受附第二四八六号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約により取得した所有権移転請求権の登記の抹消、
(3) 同庁昭和二十六年七月十三日受附第二四八七号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約によつて取得した賃借権設定請求権の登記の抹消、
第一審被告は第一審原告にたいして、別紙目録(二)ないし(五)の土地について、つぎの登記手続をすべし。
(4) 浦和地方法務局昭和二十六年七月十三日受附第二四八七号によつて登記した昭和二十六年七月七日附譲渡契約により取得した賃借権設定請求権を移転する附記登記、
第一審被告の控訴は棄却する。
第一審被告は、原判決中被告敗訴の部分を取消す、第一審原告の請求は棄却する、第一審原告の控訴は棄却する、との判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は、第一審原告において、別紙目録(一)の土地については、第一審原告において所有権を取得した後、本件三口の貸金の弁済によつて、債権者たる第一審被告に代位し、右貸金の担保たる抵当権停止条件付代物弁済契約による所有権移転請求権及び停止条件付賃借権設定請求権を取得したので、これらは混同によつて消滅した、よつて前記(1) (2) (3) の登記手続を求める、と述べたほか、原判決の事実と題する部分にかいてあるとおりである。
三、理 由
第一審原告の請求のうち、別紙目録(二)ないし(五)の土地について原判決主文(一)に表示の登記手続を求める部分の理由あることは、原判決理由に説示するところのほか、原審における原告藤田伝次郎本人の供述及び甲第十二号証の記載とあわせ考えると、第一審原告らはその弁済によつて債務者飯塚要次郎にたいして償還請求権を有することを認めることができることによつて明かである(この判決主文(二))。
債務を弁済しないときは代物弁済として土地の所有権を移転すべき旨の停止条件付所有権移転請求権、債務を弁済しないときは賃借権を生ずべき旨の停止条件付賃借権設定請求は、どちらも、民法第五百一条に「債権ノ効力及ヒ担保トシテ債権者カ有セシ一切ノ権利」といううちに含まれないと解すべきである。これらの権利は債権者が債権と関連して有する権利ではあるが、債権そのものの効力でもなければまた、その性質上、債権の担保たるべき権利でもなく、当事者間の契約によつて債権と関連せしめることによつて債権者の地位をつよめ、または、債権担保類似のはたらきをさせるだけのものにすぎないからである。従つて、第一審原告の請求のうち、別紙目録(二)ないし(五)の土地について、原判決主文(二)に表示の登記手続請求、及び、同土地についてこの判決事実らん、控訴の趣旨(4) に表示の登記手続請求は、理由がないとして棄却すべきものである。
別紙目録(一)の土地は、第一審原告の所有に属するから、この上に存する抵当権は代位により、所有権との混同をきたして消滅するから、登記簿上抵当権者として登記せられる第一審被告にたいして、抵当権登記の抹消を求める権利あること明かである。よつて、第一審原告の請求中、前記控訴の趣旨(1) に表示の登記手続請求は理由ありとして認容すべきである。(この判決主文一、(一)(1) )。
別紙目録(一)の土地についての、前記第一審原告の控訴の趣旨(2) (3) 表示の請求につき按ずるに停止条件付所有権移転請求権、停止条件付賃借権設定請求権が弁済により債権者に代位したものが行い得る権利でないことは前説示のとおりであるから、別紙目録(一)の土地が第一審原告の所有となつても、この土地に関する前記権利が混同によつて消滅するはずはない。混同によつて消滅したとの主張による登記抹消請求は理由がない。しかし、本件にあらわれた事実によると、これらの請求権についている停止条件が成就することはないことに確定したので、かかる請求権は存しなくなつたこと明かである。従つて、土地の所有者は所有権の効力として、かかる権利の仮登記の抹消を求め得べきこと明かである。第一審原告の請求中この部分は理由ありとして認容すべきである(この判決主文一、(一)(2) (3) )
こういうわけで、本件当事者双方の控訴は、それぞれ一部理由があるので、原判決を変更するを相当と認め、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第九十二条、第九十六条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 藤江忠二郎 原宸 浅沼武)